夕涼み/マッドビースト
 

 果たされなかった約束の面影や
 叶えられなかった願いの欠片達が
 光の飛沫になってとび
 漂い
 空気に溶けて香る
 夏の夕べ

 深呼吸すれば
 また私の中に戻ってくる
 今度は体に溶けて私も夏の一部

 さよなら
 という言葉は陽炎のようだ
 いつも出てくるのは小説のなかだけで
 母や先生に習った挨拶だけれども
 ほんとうのさよならを口にしたことは
 きっとまだない

 果たされなかった約束の面影や
 叶えられなかった願いの欠片たちを
 送るための花火
 火は光より強引で今に留まろうとしている
 今を留めようとしている
 笑顔は露光され
 
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