自然物の悲愴/kw
 

物珍しそうに集い来る
びっこを引いた足からは
毛が削がれ紫色の血肉が垣間見えた

愛らしい顔だけに痛々しさが際立つ
悲愴という言葉を具現化した彼等の存在

樹木の壁の向こうには嘘の喜びで満ち溢れているのに
触れることも抱きしめることもせずに逃げ出した

一週間後同じ場所に辿り着いたら
缶詰もトレーも猫達も綺麗に失せて
残るのは次の宿主を待つ小さな傘の家だけ

草の茎を両足で折って大地を踏み締める
猫達は保健所の冷たい牢獄で死に震え
非情なるナチス・ドイツの殺害方法で抹消される

猫殺しは概ね人間の法で裁かれることはない
彼等を両腕で抱き愛情を注いだ上で絞殺
悪魔の道を選ぶべきだった

人工的な自然空間に纏わる自然物の悲愴
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