掌/
蝶番 灯
掌一杯のきれいなお水
まだ其処は美しい
「ごめんなさい」
あたしの唇から
不思議もなく零れた言葉
拡がっていく波紋は既に
悲哀の種の肥になった
指と指の間から 或る一滴が
音も無く堕ちた
あの日あたしが日本にうまれて
どれ程の人間が歓んだだろう
新しい生命の音は
最後の真実だったかも知れない
「嘘を吐かない」
と云う嘘は傷になった
少しずつ漏れていくきれいなお水
まだ まだ まだ大丈夫
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