仮定法への追悼/ディレッタント
 
「詩んでみようか」
「うん、死んでみよう」

ひとりぼっちになった宇津木は
歩行者信号の自主性を問うのです
アルチュールみたいに口をひん曲げて

錆びたボルトをこめかみに
「すいさいど、すいさいど」
彼女はきっとフジミになったのだ

ことばに墓標は建てられないので
しみったれた交差点のそのパラドなんとかに
はなはだオブスキュアな花束を抱えて
滞空時間の長いお遊戯を
無智蒙昧に見上げている

詩に場所などくれてやるが
果たしてアルチュールはどっちだろう、と
宇津木は口をひん曲げながら
暗雲と詩集を重ねてみるのです
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