夕暮れが始まる頃に/チャオ
 
が指先に止まる。指先に止まった音符は、少しづつ緊張を解いていった。唐突に僕は悪意を抱く。気が付かれない様にゆっくりともう一方の手を動かす。しかし、音符は気が付いた。すぐさま飛び去ると、もう僕の目には見えなかった。

いつの間にか口ずさんでいた曲は、隣の家の同級生が弾く夕暮れに放たれたピアノの音だった。



土手には一台の車が止められていた。あまりおしゃべり好きじゃない友人が僕に耳打ちしたことがある。

「川原には大人の世界に続くトンネルが隠されている」

口笛が得意でも、誰も喜んじゃくれない。エンジンが消された車のヘットライトが灯る。赤く反射した水面に、僕の顔が映る。遠くで魚
[次のページ]
戻る   Point(4)