夏男/tonpekep
 
夏のことをよく知っている人がいて
その人は
例えば緑の葉っぱを重ねたような人で
ときどき
鮮やかな花を咲かせていたりする

ただ画家がその人の絵を
描こうとするとき
その人は
たちまち恥ずかしそうに崩れ落ち
小さな川の流れになるような人で
絵の中では
網を持った子供らの水飛沫になっている

わたしの夏はそうやって
繰り返してきたように思う
そうしていつの間にか大人になった
今じゃ夏のことはよく分からない

ときどき夏のことをよく知っている人を
子らの絵の中に見かける
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