ゆめ。くろさわぱくり/いとう
 




こんな夢を見た。

眠っていたら、別れた彼女が戻ってきた。
泣きながらごめんなさいと謝っている。
もちろん許す。許すも何も、まだ好きなのだ。
やり直せるものならやり直したい。
ありがとうと言って抱きしめる。
嬉しくて涙が出る。
と、そこで目が覚める。夢だったのだ。
隣りでは彼女が眠っている。
私は泣いている。
こんな夢を見たと彼女に告げると、
「いなくなったりしないよ」と、
笑いながら抱きしめてくれる。
と、そこで目が覚める。それもまた夢だったのだ。

隣りには誰もいない。私は独りだ。
それは夢ではなかった。





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