手紙/狸亭
 
秋霖 というのでしょうか 長い雨でした
三年 という歳月は 忍耐の最小単位
きみが家を出て一年ほどは手紙のやりとりが盛んでした
やっと抜けるような青空がひろがり快い
晴天がつづいているのだけれど ふと 物足りない
こうして時間はどんどん流れていって
もうすぐ寒い冬がやって来るという思いだけが累々 
若いきみは しかし蒙昧の中ではなくて

仕事に余暇に 精一杯生きているのでした 
この夏北京に 行ってしまったきみの妹から手紙到来
残った家の者たちみんなで読んでみました
激動の世紀末で それぞれ離れて暮らす家族の未来
きみの弟たちにしても よくやっていて心強い
健康一家というのでしょうか わたしは相変わらずの好き勝手
古本を買いこんでみたり 下手な詩を書いたり 時には二日酔い
日曜日から金曜日の変りばえのしない日常はさておいて

土曜日と日曜日だけが やっとどうにかの生き甲斐
行為と言葉の乖離に悩み 結局開き直って
ふてぶてしく生きながら なんとかコペルニクス的転回
を狙っているのですが では いずれまた改めて

(押韻定型詩の試み 2)

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