冬無臭/dendrocacalia
 
冬に匂いなんかあるはずが無い
みんなはうそつきだ
夜の色は刺す頬を

サワーのようだとかミントみたいだとか
冬に匂いがあるという人はみんな
大事にされたりしたりして
お互いの間違いを肯定しあうことで
恐怖と寒さから逃れている

私が夜まみれの夜
夜が私まみれの夜
夜が夜にまみれて出てこない朝の前の夜
それは静かな夜
私は刺す白い大気になって
彼のところまで広がりたい
でも今この時男の子は
私じゃない別の女の子をぎこちない手で抱いているってことを私は知ってる
そうして恐怖から逃げている

彼のその部屋に行って
その時のにおいがちゃんとわかったなら
冬のことが愛せるかもしれない

帰宅して真っ白なアイスを食べた
これは、冬の味。
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