良い詩人は、、、/いとう
 

  恋しいことなんかあるものか
  さう思ひながらもあなたのやさしい返事を待っていた
  まぶしいような雪の朝 路傍で僕は佇んでゐた
  僕のうしろを馬車が通った
  僕のうしろを人が通った
  でも 閉ざされたままの白い二階の窓だった
  強烈なものを信じ
  自分がいいのだと思ひながら
  昨夜までのあたたかいあなたの眼ざしと声をそのまま
  僕はその時も待っていた
  明るい日はキラキラキラキラかがやいて
  するどく風がかすめてすぎた
  閉ざされたままの二階の窓
  僕は雪つぶてをつくつて いきなり どすんと投げつけた
  こなごなの窓
  僕は逃げた
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