垢塗れの絵本を開く/kw
敷き詰められた雨降り電車の中は
屠殺場へ運ばれる家畜を乗せた荷馬車
人間達が呼吸を繰り返すが
浄化する緑はなくて
二酸化炭素が充満し
悪しき空気は思考司る脳髄蝕み
乗車続行の男の短絡的な機鋒は
停車駅へ我先脱す
無造作な一人に向けられて
肋骨の痛みに耐えながら
僕は辺りを見回すけれど
時間に追われる群集の渦に凶器は紛れ
怒りの残滓が心臓にこびり付いたままだ
無差別な報復の循環の憤りを平和なこの国でさえ感じた朝
テロリストと違えられて打ち抜かれた額
侵略者を阻む路肩爆弾の誤爆に巻かれバラバラになる民間人の身体
貴方は本当に僕達が憎いのかな
不透明な対象を殺めても復讐は果たせない
不条理に耐えてもアンネ・フランクは決して喜ばないから
僕は叫ぶよ
早くその残酷な絵本を閉じてください
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