翼/まんぼう
信号を渡ると
防波堤のむこうで
お前が
小さな翼を
そんなに忙しく羽ばたくから
お前が何千キロの空路を旅した
勇者とは思えないで
笑ってしまったのだ
虚仮脅しの人間関係に
すっかり狎れて
何とか生きてきたのに
お前がそんなにせはしく
羽ばたいたのを見て
俺は何だか駄目になった
永く生き物をやめて
人間をしてた事に
笑ったとたんに気付いて
こんなのは一時の気の迷いだから
俺はこれからも人間で生きてゆくが
お前がそんなに小さな翼を羽ばたくから
今日は寒いな
北風に弾かれるな
戻る 編 削 Point(2)