あなた/こしごえ
あなた
小首をかしげて
地面の底の
深く流れる息遣いを
その深い色した瞳に感じて
あら、生きていたのね
なんて
おちょこでしっとり日本酒を
なめては池の月影を
ため息ついては細くなり
肌は、うす紅さしていう
今日はわたしの命日で
あなたはそうして酔っている
遺影へ
ぽつり
ぽつりと話しかけて
うふふ
なんて
美しく
微笑む
あなた
左手の
小指が
じんじんと
高鳴りを打つ
悲しさの悲しさの無い
幸せの幸せの幸せの涙
この
かすんだ意識に光を灯す
また
生者は、輝いて見えるのだ。
当の本人は、そのことに気づかない。
しかし、
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