白紙/嘉村奈緒
ていくのを
困ってしまう蜻蛉球を齧りながら見ていた
いつもララしてる
夕闇が始まると村の人は窓を固くしめる
音も殺す
組まれた柵の上 両足で空気の入れ替えをしている
ねーさん
て呼ぶと、ねーさんは縞模様な声で返事をした
キキイって返事をして
油さしをくださいって言った
少しだけの風が吹くと両足が所在無く揺れる
空気の入れ替え してる
鍾乳洞に行こうかどうか迷ったけれど
もう縞模様な左手じゃいけない
しばらくぼんやりしていたら
世界がぼんやりしているのだと気づいた
ララしてる
もう一度ねーさん、て呼ぶ
縞模様の右手で瑠璃を落とす
瑠璃は転がる
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