白い花/鈴木もとこ
朝
緑に染まる川沿いを歩く
白い花がいくつも流れている
八高線の高架下
電車が通るたび
元の樹を離れ
降っていたのだった
周りの遊歩道はそこだけが白く
ぽっと明るい
故郷に降る雪を思った
踏みしめる音
雪解けの匂い
広い空
―こことは違いすぎている
あこがれは無かった
無機質な情報都市 東京
昨日までの数百万分の1が
今日は街角の巨大広告で笑う
手に触れているものが本物かどうかさえ
判らなくなってくる街
過去から引きちぎられたような気がした
離れてから知る
不確かなものはここほどは多くなかったんだと
白い花は流れてゆく
白い花は流れ
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