落下星/虹村 凌
 



目の前を星が横切るのが見えた。
ここもそろそろ危ないか。
僕は電話を手に取って、思わず笑った。
もう電話なんて通じやしないのに。
最後に声を聞こうなんて、莫迦らしい。
放り投げた携帯が、幽かな光を放って宙を舞う。
がしゃり、そんな音が聞こえた気がした。
それが悲鳴に思えたのは、世界が歪んでいるからだろう。

誰かが遠くで手を振っている。



行かなくちゃ。



僕は彼を知っている。
歩道橋に掛けた手が、何故か血で汚れている事に気づいた。
足下を見ると、包丁が転がっていた。

あぁそうか、彼は僕が殺したんだった。

そんな事も忘れていたのか。

その刹那、小さな星が、僕の背中を穿った。

ぐらり

世界が傾いた気がした。

僕は、携帯電話みたいに空を飛んで。















がしゃり、








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