寓話 真夜中の観測問題/クリ
子供の頃 あることが気になって仕方なかった
部屋の灯りは僕が部屋から出てもまだついているのか
それが知りたくてたまらなかった
誰もいない部屋は灯りを点している必要がないので
ひょっとしたら「休んで」いるかもしれないと考えたのだ
何度もドアをそっと開けては確かめてみた
いつも灯りはついていたけれど 一度だけ
隙間から覗いた瞬間に灯りが点いたように感じた
心臓がゴトリと寝返りをうった
見てはいけないものを見てしまったように思った
今僕の隣に彼女が眠っている はずだ
けれど何故なのかどうしても寝息が聞こえない真夜中
僕は恐くて目を開けることができない
Kuri, Kipple : 2005.06.25
これが量子力学のいわゆる「観測問題」につながることを知ったのはそれから10年も後の話
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