移民/カンチェルスキス
 
重油のような心理が一瞬消えて
 殺した
 おれは自信を持って殺していた


 苦味ばしった蝿のような通り魔
 おれを殺すはずだった
 おれに殺された
 塀の上に立った白猫が
 死んだそいつの皮膚を舐めて
 道路を横断した
 記憶に残らない死
 ずり落ちたズボンのような
 弛みきった街で生まれた
 汚れも消えたそいつの洗濯物が
 ぬるい風になびいていた


 おれは手についた赤錆を拭った
 



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