ブルーベリータルトケーキ/蒼木りん
明日暮らしてゆく金もないのに
ふらり
ブルーベリータルトケーキなど買ってしまう
たぶん
目の前の現実が
刃を突付ける状況でない
いつもと変わらぬ車線
いつもと変わらぬ街並み
いつもと変わらぬ日差し
いつもと変わらぬ視線
いつもと変えられぬ習い
二人とも
この呪縛を切ってしまえば
もっと向き合ったり
同じ方向を向ける
一から出直せば
そのほうが
いいのかもしれない
二階の窓から
街燈が覗いてた
誰も通らない道
この灯りに
私だけが気づく
物干しにいた蜘蛛は
美しい巣を残したまま
いなくなった
蜘蛛は
そっとしておく
蜘蛛である意外の
何ものでもないのだから
そんなことを
想っている場合ではないのだ
明日暮らしてゆく金もないのに
今夜
甘くネットを彷徨っている
伸るか反るか
目の前は綱渡り
夏の賞与がでないのだという
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