初夏の庭/フユナ
 
何年も
荒れはてていた庭に
野菜の苗が植えられ
植木鉢の
マリーゴールドが置かれた


母と父が水をまいて
コンクリのように
馬車道のように押し固まった土を
いくぶんか、柔らかくさせた


網戸越しに見ていると
それはまだ
スクリーンの薄もやの むこう
上の木々にはまだ混沌が満ちており
小さな弟はまだ
その蜃気楼に気付いてはいまい


どこも悪くなくなった
私と小さな弟は
今度は どこも悪くないことに
冒されまいとも思っている


上の木々にはまだ混沌が満ちており
下には枝豆とミニトマトとマリーゴールド
そして網戸の隙間を
通り抜けてくる 夏の臭気と水音


まだ何も網戸を越してこない
初夏
その向こう

私も小さな弟も
もてあまして
うだるように 祈っている







 
 

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