モーニングティー/半知半能
昔から僕の家では朝は紅茶で
それも普通のティーバッグで作るやつなんだけど
僕はそれが好きだった
透明なお湯に少しずつ漂うように染みていく
あの色が好きだった
自分の世界が少しずつ広がるように
確かめながら手を伸ばしていく様子が危うくて
僕はいつも白いカップを怖々と覗き込んでいた
宝石みたいな赤色に本当に魅せられて
その「今」の色を留めたくてティーバッグを取り出した
こんなすばらしい色だきっとおいしいに違いないと
父にそれを差し出すと、何うっすい紅茶作ってんだ!と跳ね除けられた
カップを覗くとあの一瞬の煌きは無かった
飲む紅茶の甘さは減っていく 減らしていく 減らされていく
銀のスプーンはどこに行ったっけ
今でも僕の家では朝は紅茶で
それも普通のティーバッグで作るやつなんだけど
僕はそれが好きだった
透明なお湯に少しずつ漂うように染みていく
あの色が 好きだったんだ
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