『Alice』/川村 透
 
Aliceと書いてアリサと読むの、
と女は言った。
黒の手袋をベッドサイドに垂らし人工の月明りの中で背中を見せる
のは初めて、
と女は薄く笑う
きしむ音はチークの椅子かチープなベッドかそれとも、
なの、
え?
女の言葉を聞き漏らした僕は黒のレザーのドレス、その背中に棲む頚骨から
腰骨までの尖った蛇のうねりに目を奪われた
のも初めて、
なの、
かもな。
河の、ヨウナモノ、ノナカ、デ。
ナカナイデと唄う君、真昼のセレナーデか、ブラフなYou・撃つ、か。
煙草の煙と阿片じみたコーヒーのあぶく、女たちの銀のオフィスに、
プラスチックなSoul、躁鬱
ドメステックなcall
[次のページ]
戻る   Point(6)