せなか/緋史
 

足のつめを切ろうと丸くなる

その はだかの 背中

連なる背骨の緩急
張りつめたなめらかな皮膚
緩やかな凹凸をしめす筋肉
見えない熱い血流

 

触れては いけない

なんて 無防備な
手を伸ばせばすぐに届く距離

 

けれど触れない
触れてはいけない この距離

 
さっき磨いたばかりの歯をたてようか
爪をたてようか
優しく撫でようか



気にしていないふりで視線は確実にその広い せなか

気分は獲物を前にした禁欲的な獣



無遠慮でしたたかな視線に気づかない主は

パチンパチンと軽快な音を立てつづける


そんな夏の午後
戻る   Point(2)