せなか/緋史
足のつめを切ろうと丸くなる
その はだかの 背中
連なる背骨の緩急
張りつめたなめらかな皮膚
緩やかな凹凸をしめす筋肉
見えない熱い血流
触れては いけない
なんて 無防備な
手を伸ばせばすぐに届く距離
けれど触れない
触れてはいけない この距離
さっき磨いたばかりの歯をたてようか
爪をたてようか
優しく撫でようか
気にしていないふりで視線は確実にその広い せなか
気分は獲物を前にした禁欲的な獣
無遠慮でしたたかな視線に気づかない主は
パチンパチンと軽快な音を立てつづける
そんな夏の午後
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