首都高にて/小池房枝
 
東京の水面は光りに紛れる
湾岸の運河は白っぽい夜空の下
ビルたちと同じように街灯りを抱いている

街中を少し外れると水面は暗い
平らかな夜景に微かに縁取られながら
水があることや河であることが
そこに何も見えないことでわかる

本当に山の中ならば陸も水面も真っ暗だ
月の夜には月のぶんだけ
星の夜には星のぶんだけ仄かに明るむ

空に開けていれば水面のほうが明るいくらいだろう
人にとって森は天蓋だから

人は梢に立って土地を見渡したりはしない生き物だから
 
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