風のオマージュ その10/みつべえ
 
ろう。それにしても現代詩とはかけ離れた舞台の書き割りのような詩に、なぜ私は魅かれたのだろう。そこに理屈ではない何かがある。口にだして読むと、この詩の単純なダンディズムがよく伝わる。かっこいいのだ(笑)。そこでもうひとつ引用する。これらの詩が私以外の者の目にふれるのは、これが最後だろうから。




遠いメルヘンの中へ
まどろみかける脳髄に
しんしんと
重い雪片ふりしきり
ほうふつと灯る
赤いランプ

雪の夜半
夏の日の海に捨てた
貝をなつかしみ
あれはかぎなく美しい
宝石であったと思う


 ※同詩集より「追憶」




●萩原隆詩  

東京生まれ。この詩人については詩集に書かれている以上のことはわからない。1970年当時、北海道詩人協会の会員で、札幌郡広島町にて日本電信電話公社(現.NTT)に勤めていたらしいが、現在の詩人協会の会員名簿にはないし、廃刊になるまで北海道の文芸の公器だった「北方文芸」のバックナンバーの記事のなかにも見当たらない。



 
 
 


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