鬼ノ園(おにノその)/こしごえ
、
静けさに打ち解けて
いるというのに
「このスープ、すこしサラサラね」
「もう少し濃い方が良かったかしら」
わたしも食事をする
たいていのものは、おいしくいただく
ただ一つ
きらいなもの
それは人間
たましいの色とりどりが
いたいたしくも輝いていて
わたしの五感を震わす
そして
さいごの感覚がダメという
はいりこんではイケナイと…。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした」
南天から
蛍の戯れを
あのヘビの目がなめている
暗黒に住まう
音がピシピシと
この体に内包している淋しさを
いっそう惨(みじ)めにさせる
星の曲線を
逸(そ)れた引力が
いつしか明滅を
狂わせて青く
闇色の排泄をさせる
あのひとは、ここを訪れない
ひとりのひとを愛してしまった
わたしは鬼
命が、ひそやかに瞬いている
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