銀の鈴参り/ヤギ
 

・・・・・・・・る力をください

短冊は自然と舟の形に折られてゆき
その中に水が湧きました
夜の川の色です
いつしか笑い声は止んでいて
私はそれを飲まなければいけない気がして口に含みました
ほとんど匂いも味もなく心地よく冷え
鼻に抜けるごく微かな甘みに胸がすき
とても優しい気持ちになりかけたのですが私はその水を

吐き出しました

男はそれに怒るでもなく
笑うでもなく
悲しむでもなく
ちょうど墓石を前にした人が見せる独特の無表情さを見せて
すいっと背を向けた拍子に消えてしまい
私は取り返しのつかないことをした気持ちになりながら
見知らぬ山道に一人
笹舟を手にして立っていたのです


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