『赤い傷魚』/川村 透
 
ピアノの音色が聞こえて目が覚めた


枕元には、つぶやく炭酸の声


コップ一杯のコーラがヘビのように僕を糾弾している


”地地地、知知知、オロ血、ミズ血”


障子を開けて、浴衣を直して、下駄をつっかけた


ぴいんとはりつめた弦が、繰り返し僕を呼んでいる


”線分、SEVEN、7、seven、線分”


アルイハ位牌デ一杯ノ土間


走り出そうとしてつまづくとそれは妹の卒塔婆


引き戸を開けてまろび出て


おまえの、傷、は夕焼け空の、瞳となって


中空に、七つの糸遊、かげろふ、傷の虫


陽炎を幼子のように追いか
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