月曜日の幽霊/岡部淳太郎
うとつとめていた
城の庭園にある古井戸
夜が来る度に
女はそこに通うようになった
井戸は 海とつながっていた
#3
何故と問う暇もなく
死んだ男への思いに駆られて その熱病のままに
女は井戸に赴き
その中に男に向けて書いた手紙を落とした
毎夜
まったく違った内容の手紙を
女は井戸に落としつづけた
不在の者への手紙を投函する
背徳の孤独
海の底で男は
ひとり 海流に揺られていた
#4
夜毎女が井戸に落とす手紙
その内容は女にさえ意味不明
死んだ男が読んではじめて理解されるものだった
だが 果たして男のもとに手紙は届いているのだろうか
井戸は
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