いつになく透き通った心で/近之藤
 
どこかの家の玄関先に
生い茂った樹が
風に吹かれて揺れている
その下で三輪車に乗って
遊ぶ子供達その中で

薄汚れたペットボトル片手に
楽しげに空を仰いでは
夕暮れ時の空気を
さも美味しそうに
吸い込んでいるあの娘

そんななんでもない光景が
美しく私の心を駆け巡るのは
いつになく透き通った心で
居られているからだろう

幾羽の水鳥が川面に
扇形の波紋をつくりながら
これまた扇形に並び
通り過ぎるのを
優しい目で眺めていた

その川に掛かる橋の上
まだ覚束ない足取りで歩く
幼子の手を引き導く
母性愛の溢れそうな
目をしている母親

そんななんでもない光景が
美しく私の心を駆け巡るのは
いつになく透き通った心で
居られているからだろう

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