それぞれの日時計/望月 ゆき
窓枠の内側だけがすべてなら世界も朝もはねかえすのに
目をとじたままたしかめる左側まだだいじょうぶ黎明の時
暁の別れとともにおとずれるコーヒー2杯の蒸気する朝
ペダル踏むかかとに隠す「すぐ会いたい」坂道の加速ではじけとぶ
コピー機の前ですぎてく昼下がりホチキスできみとぼくをとめたい
咲きほこるケシに囲まれキスをする白昼夢だと知ってか知らずか
影のびてほんのひととき世界での存在感さえ錯覚する午後
夕さりにブランコゆらし影だけが重なる1秒いとおしむきみ
左から右へと流れるなにもかも制止する癖抜けぬ夕暮れ
「帰りたくない」とつぶやく宵の口聞こえないふりを見ないふりする
夜の帳がおりてきてきみさえも隠してとおりすぎてく足音
さようならだけを残して終電車見送る月の冴え冴えなる空
真夜中に泳ぐ海なら境界線越えて夜空につづくクロール
終着点たどりつくたび過去になり永遠の意味を少し知る夜
ガラス窓うめつくす朝焼けの底ねぼけまなこで浮上するきみ
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