視聴者は今/吉岡孝次
 
さて、世界の存立構造についても
恋のかがやきについても消息を尋ねなくなった不惑の手前
まだ父母になついていた時分のテレビに流れていた
スポンサーの懐具合がにじむテロップに感じていた寂寥を
暇な折々、自分なりに仕上げてしまおうか。
僕は今ではさみしくない一人の蔵書家だ。
あの頃のほうがずっと怖いくらいにさみしかった。

きっとあの頃に もういろんなことは決まっていたんだ。
僕等の人生は十代の残像

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