小説の習作 原稿用紙三頁 #01/田中教平
 

 氷のように冷たい。
「これは凍える手ですね」
「冷たい?ねぇ、冷たい?」
「僕、瞑想しようと思っていたんだけど」
 カナは椅子をキィ、とひいて座った。
「じゃあ、わたし、小説の添削をしていますか」
と言って原稿用紙の束に手をやった。
 ユウスケは頭をかきながら、取り敢えず、目を閉じて、呼吸に意識を集中させようとした。頬にはまだ冷たい感触が残っている。

 黙し、瞑想しているユウスケの眉間が寄った。
 昨日止めた煙草への渇望か。もし煙草を喫ったとしても、禁煙薬を服しているユウスケには不味い事がわかっている。
つぶさにマインドフルネスの瞑想をしているユウスケだった。イライラの原因を探ろうとすると、胸の奥がざわつく。口を堅く閉じる。肩が僅かに上がる。
 ふと、目を開けて窓の外を見た。
 音もなく雪が降っていた。
 
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