咲子?/たま
 

六男「お母さんはどうして亡くなったの?」
咲子「乳がんだったの……」
六男「いくつで?」
咲子「四十九……」
六男「ショウコは?」
 十六だったという。
咲子「あ、そうだ。この漢和辞典ね、名前があるの」
六男「なまえ?」
咲子「うん。GAGA、っていうの」
六男「ガガ?……アメリカの?」
そんな名前の歌手が売れていた。
咲子「ううん、ちがう。GAGAは東北弁よ。お母さんのこと。かがとか、ががとか、呼ぶの。それでね、この漢和辞典はあたしの母が中学生のときに買ったものなの」
 咲子の母が中学生だったというと、一九七〇年前後のことだろうか。角の朽ちたクリーム色のハードケース
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