咲子?/たま
らだ。
その山手線は朝夕の通勤に欠かせなくなって、五反田から東急池上線に乗って二駅目の戸越銀座で降りた。
駅前の雑多な商店街を横切って、五分も歩くとわたしの勤める印刷会社がある。下井草のアパートからだと通勤時間は一時間と少し。始業は八時半で、パート社員の咲子は九時に出社して四時まではたらくが、正社員のわたしは五時半の終業後も、入稿の多い日は二時間余りの残業があった。
「あたしね、シー・エム・ワイ・ケーってのがわかんなくて、それを聴くたびに笑ってたの。ほら、西城秀樹の歌あるでしょ? あたしの姉がね、ヒデキの大ファンだったの……」
咲子はそんな笑い話をしたけれどあれはYMCAだったかも。
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