星にならなかった河童 第四章 大雨の夜/板谷みきょう
 
その年、
雨が止まなかった。

村人が恐れていたのは、
流されることではない。
川底に沈めた重い過去が、
浮かび上がることだった。

「誰かが行かなければならない。」
それは命令ではなく、役割の確認だった。

一人が、橋へ向かったが
誰も名を呼ばなかった。

呼ばなければ、
それは
初めから存在しないからだ。

蔵の奥(目に見えない場所)に
隠されていた重い鉄枷を
両手に提げ(ひっさげ)ていたモノ。

濁流の音にまぎれて、鉄が触れ
低い響きだけが残った。

雨音は、祈りと命令の違いを、
きれいに洗い流していた。
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