すすき野原の物語(与一と狐)/板谷みきょう
 
与一は孤独ではなかった。

すすき野原の奥、揺れる穂の隙間から、
二つの光る点がじっと彼を見つめていた。
一匹の狐だ。
その狐は、自分の茶色い耳を隠すことさえ忘れて、
泥まみれになって働く男の姿を凝視していた。

ある夕暮れ、作業を終えた与一は、ふと、自分が耕した土地の端に、
破れた木の葉が落ちているのに気づいた。
化ける練習に失敗し、悔しさに震えながら去っていった獣の気配がそこにはあった。
与一は、自分の荷車から一番きれいに洗われた「クヌギの葉」を一枚選び、
そっとその場所に置いた。

『……明日も、ここで待っている。』

言葉には出さなかったが、与一の指先が土に触れたとき、
そこには確かな「契約」が結ばれた。

村人が笑う「石ころ」は、まだ土の中で眠っている。
けれど、与一の心の中では、すでにそれは「村を救う宝」として、
黄金色の光を放ち始めていたのである。

[グループ]
戻る   Point(1)