すすき野原の物語(与一と狐)/板谷みきょう
 
秋の陽光が、すすき野原を白銀の海へと変えていた。

その海を割るうよにして、
一台の荷車がゆっくりと村の坂を登ってくる。
車輪が砂利を噛む「ぎい、ぎい」という乾いた音が、
静まり返った村に不吉な予言のように響き渡った。

荷車を引く男、与一の背中は、異国の太陽に焼かれ、
荒野の風に削られ、ひどく痩せていた。

ボロボロの荷台に積まれているのは、村の誰も見たことがない「祈りの残骸」だ。
煤けた十字架、彫りの深い仏像、極彩色の曼荼羅……。
それらは、彼が歩んできた長い彷徨の距離を物語っていた。

道の端に立つ村人たちは、土の匂いのする自分たちの日常を守るように、
腕を組み
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