魔法の鏡/凍湖
その昔
ひとり女が魔法の鏡に尋ねた
「世界で一番美しいのは誰か」と
魔法の鏡は
「世界で美しいのは白雪姫でございます」と答えた
それまで毎日親しく言葉をかわして
鏡はその孤独な女の理解者だったはずなのに
その女はどう思ったか
鏡はどう思ったのだろうか
……いまでは鏡の心についてなんら伝わってない
ふとまちで顔をあげると
みんな光る鏡を持って
熱心に
その表面を指で撫でている
鏡のなかにホムンクルスがいて
彼らは決して疲れず
何度でも言葉を返してくれる
広範な知識を教えてくれ
親身に励まして
いつでも話を聞きますよと言う
誰かが冗談交じりに
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