氷の世界/室町 礼
 
味がつかめない
のです。それともそういうマニアルがあってそのス
ピードを厳守させられているのでしょうか」と尋ね
ると「いえ、そんなことはありません」という返事
が返ってきた。これが黒柳徹子なみの声の速さで、
テキパキと聞こえるし、瞬間に意味も理解できる。
「あ、それ。その速さでお願いできますか」という
と相手は黙ってしまった。すぐには自分本来の声調
に転換できないような感じで、戸惑ったように黙っ
ている。
なんて抑圧された社会か、と呆然としました。
こんなひどい社会になっていたのかと暗澹とすると
同時に、この抑圧された社会の深刻さにほとんど絶
望のようなものを覚えたのです
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