余生/たにがわR
 
まだ冬になる前だったと思うけれども
とても寒い日の朝に彼女は二度目の自殺を図った
幸いにして命は取り留めたが彼女の心は治らなかった

けれど少しふっきれたような彼女に
「大丈夫みたいだね」と僕が言うと
「まぁ、後は余生みたいなものだから」
と彼女は言った

    *

まだ秋になる前だったと思う
涼しさが湿気の風に紛れ込む夕暮れ
僕は三度目の自殺を図った
幸いにして手後れになる前に
彼女が僕を見つけて僕は助かった

そしてそれから僕は余生を過ごしている

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