夜姫(よき) わたしが愛したA|へ/ただのみきや
 
凍える星たちを白い息がつつむ
わたしは再びわたしの夢を抱き寄せた
口から口へ息を吹き込んだ
ことばには肉体という壁がなかったから
あれはいつの春だったろう蝶が花に恋をしたのは
蜜を味わう前だった 似ては異なる姿に引き寄せられ
ひたすらに探り合った
この柔らかななにものかが飛び去ってしまわぬように
見えない目で見つめ合い
互いの匂いに惹かれ合い
夢は生きていた あらゆるいのちに姿を変えて
真夜中の群青 
指を切ってしまいそうな三日月
画面の中の静かな文字
ああ 出会えたね 不思議な花 ゆらめく星
わたしの夜姫(よき) 正夢よ


               (2025年12月27日)





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