夜と雨/
りつ
冷たい雨が降りだした町に
冷たい夜がやってくる
夜明けはいつも遠い
トーストの微笑みも
紅茶の雫も
珈琲の湯気も
夜明けの向こう側にある
手を差し出しても
触れることができない幻を
それでも手繰り寄せるのは
無条件に
明日も生きているという信頼か
深度0に浮かびながら
今日は潜る気になれなくて
揺蕩うばかりの幻想を
ひとつずつ折り畳む
オルゴールを鳴らす
トロイメライがゆっくりと満ちる
雨の音を邪魔せぬように
夜の泡沫を
潰さぬように
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