梅雨空日記/野月歩
 


高速で回転している花束を見ている朝の洗濯機の前


小窓からしゃぼんの香り飛び出して空に散らばる雲の石鹸


仰ぎ見る雲は雨雲どんよりと黒い何かをぬぐえぬ散歩


たち止まり傘を忘れて振り返る降りだす雨にうたれたい午後


曇天の空を見上げて振り返る蝙蝠傘のようなあの日々


この土にじわり飲まれた幾億の雨粒のごと命をおもう


一滴の雨粒おちてたくさんの溺れる蟻をずっと見ている


ゆっくりと人差し指を差し伸べて捕まる蟻を我と重ねる


ほんとうの自分の姿知りたくて駆け出す雨中おちゆく化粧


透明の歩道の上に広がった波紋に幼い頃の思い出


濡れ髪にタオルを被り温めたココアを飲んで見やる雨音





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