林檎、あるいは生贄の友達/牛坂夏輝
 
たちは映画を見ながら妄想し
太陽に最も近い盲目の先端で錯乱し
ひとつの紫色の鏡の内部で静かに爆発する

透過された地図の見方を学ぶ日々

生贄であっても
きみが放棄された斑点を探すと
世界で繰り返される野営地の眺望は
透明な演出家の
陰茎のように
ふたたび古い孤独の動作を示す
ぼくらは
その残骸の上を歩く蛇の腹の中の石だ

明示された歴史書の目覚めたトーストの皮膚を
移植された集団が呼びかける

「光は美しい恐怖の芸術を、光は肉と毛深い二人の英雄の悲惨で猥褻的な肘掛け椅子の苦しみを、光はこの長い黙示録的な幻覚の内部構造を規則正しい議事録作成者として、穏やかな皮肉とともに、神経質な脊椎を示唆し続けて来た」

いずれ
落下の瞬間に
林檎は
深い水の調律師へと変容し
ぼくらの星の骨組みに
優雅な金属を閉じ込めて
爪を立てるだろう
それが成長していく渇きに対しての
唯一の契約なのだ

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