ひととおりの眦と/あらい
 
詰めにして割れる歯車のセカイ。しばらく考えて。食い荒らした追憶は車内灯を消す、そうして蕾を持ち歩く速度にちかづく。そうだ! つむじ風ごとくれてやる。ビスマスのなにが正しいか。おおげさな調子で珍しく真剣な声で

 ――なんども、かがやきを捕まえるには やっぱり立ち上がって あれから振り返りました
 口に入れたおはなしは生き写しに、うろうろして脳裏に向いてくる。そして相槌を打つ 私は、なだらかな足を投げ出して ちろりと口をつぐんだ。立ち去ってから手を繋いだだけの気がする/雲が掛かり鍵を握る
 ゆっくり動いていくのをみている。ここに、傲岸の菊に見劣りした痩身も一度崩れた、普段 塗りつぶされた柄だ
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