五十音頭韻ポエムあ〜お/佐々宝砂
 
を祈りに
愛しい勇魚よ




[う]


うつろに歌を歌えば
海に浮かぶうたかた

恨みを歌に歌えば
憂き世にうらぶれる埋もれ木

うぬぼれに穿つ歌を
うたたねのうちに歌えば
うそうそとうろんな浮き足

薄明かりの現し世を
うららかに歌えうたびと

生まれくるうなりをうねりを
受けとめて歌えうたびと




[え]


得られなかったエデンに
エンジュは笑みこぼれる

絵筆を絵の具を選んで
描きましょう

エデンの悦楽の円舞を
演じましょう

絵空事でも

描きあげ演じられたエデンに
エニシダは笑みこぼれる

ええ 絵空事でも




[お]


折節の思い出を恐れてる
おぼろ夜の面影におびえてる

恐れておびえておどけて
大人げなく俺は

置き去りのおもちゃ
おもねりの思惑
おざなりのオブジェ

おもんみる俺の奥の汚穢

おずおずとでも泳ぎ出せるか
惜しんでも折れるだろうし
驚きも訪れないが

思い出に面影に溺れても
俺は沖へ



[グループ]
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