甘い廃屋/ヤギ
 
住人はとうにいなくなったらしい
不思議ときれいだ
レースのカーテンが風にふくらむ
明るいキッチンの
テーブルの上に 氷ざとうがある
グレープフルーツくらい大きい


甘い


いつでも食べられたはずだが
食べた覚えはない

静かだ
葉が風にそよぐ
おそらく夏だ
日差が暖かい
目を閉じる
風に包まれて


私は


氷ざとうを持ったまま

懐かしい
笑って過ごしていた
窓辺に立てば空は
きっと青い


甘い
なめるたびに


支えられない
もう 落とすだろう



甘い
氷ざとう



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