未明に初雪が降った朝/泡沫の僕
積もることのなかった雪のせいか、
風景はあの日の朝を思わせた。
空気は冷たく、地面はツルンとして見える。
吸い込んだ息は、鼻をツンと刺して痛くする。
そうして流れた涙は生理的現象だ。
煙突から吐かれた煙は、
きっと白くあった。
僕はそう信じた。
吐き出した息は白く立ち上り、
世界の色をさらに白くさせた。
眼鏡は曇ってディテールは見えないけど、
どうせ同じだ。
遺された物の価値は、
誰かにとっては金になるかどうかで決まる。
僕にとってはもう意味はない。
その車を見送る時、
幼い呪いを思い出して
親指を隠した。
もうその意味はないのに。
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