浄化/佐名田纓
 
春に
君の耳に向かって
話している
僕が
君の薄い耳に向かって

距離は
過ぎていく時間に
連れ添うように
だんだん
足りなくなっていく
僕らの
内側からも
外側からも

君と僕が
近づいていくのと
同じように
世界と僕らも
近づいていく

近づき切ったときにはじめて
世界が空っぽだったことが
明らかになる

長い年月をかけて
空間が
浄化されるんだ

プーチンが
ウクライナを
ユダヤ人たちが
ガザを
浄化しようとしたって

この世界そのものが
僕らを浄化する
本当さには
到底およばないんだ

春に
君の耳に向かって
話している
僕が
君の薄い耳に向かって

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